腰部脊柱管狭窄症
腰部脊柱管狭窄症とは
脊柱管とは、背骨(脊椎)の内部に形成されたトンネルのような構造で、脊髄と呼ばれる神経の束を保護しています。脊柱管狭窄症では、年齢や構造的な変化などで脊柱管が狭くなり、その中を通っている神経が圧迫されることで、痛みや痺れなどの症状が引き起こされます。
発症の主な原因
腰部脊柱管狭窄症の原因は多岐にわたります。主な原因としては、脊柱管を構成する背骨や靱帯、椎間板の加齢による変化が挙げられます。また背骨の不安定性やずれ(すべり症など)、椎間板ヘルニアも脊柱管の圧迫を引き起こし、神経への血流が不十分となり発症します。また腰に負担のかかる作業を行なう方や肥満の方は腰椎に負担がかかり、リスクが高くなる可能性があります。さらに、骨粗鬆症による圧迫骨折や側弯症などの骨変形も脊柱管の圧迫に関与します。
症状の特徴
主な症状は、歩行時や立っているときに臀部から下肢にかけての痛みやしびれがあります。これは間欠性跛行と呼ばれ、60~80%の患者さんに見られる症状です。症状は歩くことで悪化し、休むとやわらぎます。また、前かがみになる姿勢をとると症状が軽減することも特徴的です。
- しばらく歩くと脚にしびれや痛みが出る
- 少し休むと治まってまた歩けるようになる
- 立っていると下肢のしびれや痛みがひどくなる
- 前かがみになったり座ったりすると楽になる
- 腰痛はそれほど強くないが、下肢の痛みやしびれがつらい
- しびれや痛みは足の両側にある
- 歩くのはつらいが自転車には乗れる
- 下肢に力が入らない
- 便秘、頻尿、尿もれ、残尿感など、排便・排尿障害がみられる
どんなタイプの障害があるか
腰部脊柱管狭窄症には神経根型、馬尾型、および混合型の3つの主なタイプがあります。
・馬尾型
馬尾は、脊柱管を通る神経の束で、馬尾から分かれた神経は、左右の脚に伸びています。そのため、馬尾が圧迫されると両脚にしびれ、痛み、冷感などが起こります。また、馬尾は膀胱の機能を調節しているため、進行すると排尿障害が現れたりします。
・神経根型
脊柱管を通る神経から左右に別れた神経根が圧迫されて障害されるタイプです。椎間板ヘルニアのように強い痛みが、片側の殿部から下肢にかけて神経の支配領域に沿ってでます。
・混合型
神経根型と馬尾型の合わさったもので、両方の症状がでます。これが80%を占めます。
治療方法
大きく保存療法と手術療法があります。
保存療法
薬物療法
第一選択としては、神経への血流改善目的にプロスタグランジンE1を処方します。またしびれに対してはプレガバリンが使われます。
ブロック注射
神経根型で痛みが強い場合には、局所麻酔薬を直接神経の近くに注射することで痛みを軽減します。
手術
保存療法で症状が改善せず、歩行距離が短くなる場合には手術が推奨されます。また希ですが排尿障害(尿漏れや尿の排出困難)、排便障害を起こしている場合は早急に手術治療を受ける必要があります。進行性の筋力低下を認める場合も手術治療を考慮することがあります。膀胱直腸障害や麻痺は時間が経過すると手術をしても症状が改善しない可能性があるので早めの整形外科受診をお勧めします。
手術方法は大きく除圧術と固定術の2種類があります。
除圧手術は脊柱管を圧迫している骨や靭帯、椎間板を取り除くことで、脊柱管の圧迫を解消する方法です。
固定術は、背骨が不安定でぐらつきがある場合やすべり症により背骨のずれが大きい場合、腰痛が強い場合に行われます。