膝の痛み①(変形性膝関節症)
- 2022年12月11日
- 医療ブログ
膝関節の軟骨がすり減り、膝に炎症をおこし痛みがでたり、水がたまったり、進行すると変形してくる病気です。40歳以上においては男性42.6%、女性62.4%の方が変形性膝関節症をおこしていると報告されており、女性に多いことがわかっています。膝の痛みにより、運動や趣味、日常生活に支障をきたすようになり、健康寿命を短縮させる原因にもなります。初期に適切な治療を受けることで進行を遅くして、より健康な日常生活を長くつづけることが可能になります。
原因
発症、進行は多くの因子によって成り立っており、「一次性」と「二次性」に分けられます。「一次性」は特定の原因がない年齢的な変化によるものです。また膝への負担が強いスポーツや生活習慣も原因にあげられます。「二次性」は何らかの病気やケガのあとに起こるものです。
一次性
・加齢
・筋肉の衰え
・体重増加・肥満
二次性
・関節リウマチ
・半月板損傷
・靭帯損傷
・膝周囲の骨折
・痛風
・感染
・膠原病など
症状
初期
・こわばり、違和感
・動き始めに痛みがでるが、動いていると楽になってくる。
・立ち上がりが痛い。
進行期
・動いていると痛いが、休むと痛みが落ち着く。
・階段の上り下りが痛い
・正座ができない
・膝を深く曲げれない
・水がたまる
末期
・変形が目立つ
・膝がまっすぐ伸ばせない
・歩行が辛くなる
検査
問診でライフスタイルやスポーツ歴、これまでのケガや病気について詳しくうかがいます。
その後、X線検査や水がたまっている場合には関節液検査を行います。関節リウマチや痛風などが疑われる場合には採血で血液検査を行うこともあります。
<膝の水は抜くと癖になる?>
よく患者さんから「膝の水は抜くと癖になるので抜きたくない」と言われることがあります。本当でしょうか??膝の水は関節内の炎症によって過剰に作られた「質の悪い」関節液です。正常な関節液であれば問題ありませんが、膝に水がたまるときは炎症性サイトカイン(炎症を起こす悪い物質)が多く含まれているため、より炎症が治りにくくなります。また炎症性サイトカインによって痛みや軟骨損傷もおきるため、「質の悪い」関節液が多くたまっているときには抜いてあげた方が関節にとっては良いです。
最終的にはエコーで関節液の量をみて、患者さんと相談して抜くか抜かないかを決めます。
なぜこのように「膝の水を抜くと癖になる」と広まったか考えると、おそらく関節の炎症がおさまるまでには時間を要するため、水を抜いてもすぐにたまることが多いので、癖になると考えられたのでしょう。鼻炎で鼻をかんでも鼻水が止まらないのは癖になっている訳ではないのと同じです。
治療
お薬、リハビリ、注射、装具療法(インソール)などがありますが、一番大事なのは減量と運動療法、生活習慣の改善です。
減量、運動療法
原因でもあったように、体重が増えると膝に負担がかかり、痛みの原因となりますので減量は大事です。
また筋力の衰えは、増えた体重を支えることが難しくなってきます。逆に痩せられている方は筋肉量が少ないことで膝に負担がかかります。これを改善するために運動療法は重要となります。また運動療法を行うことで、減量にも効果を発揮して相乗効果が望めます。
<膝に痛みを抱えている人がしない方がよい運動>
ただ運動はたくさんやれば良いのかというとそういう分けではありません。物事には何でもやり過ぎというものがあります。
・間違った方法、フォームで行う運動
・過度な運動
・痛みを我慢して行う運動
間違った方法、フォームで行う運動
症状改善に有効と言われる運動も、間違った方法、フォームで行うと、意味がないばかりか逆効果になることがあります。関節に過度の負荷がかることで症状を悪化させたり、ターゲットとなる筋肉に正しく負荷を加えることができずに筋力トレーニングになっていなかったりということがあります。
ジムでトレーニングをしている方の中にも時々誤ったフォームでトレーニングされている方がいらっしゃいます。自分一人で行っているとどうしても自分のフォームは見えにくいのです。理学療法士など第3者と一緒にリハビリを行うことで、正しい方法やフォームを身につけることができます。
過度な運動
ウォーキングや水中ウォーキングなどの有酸素運動は、変形性膝関節症の方におすすめの運動です。しかし、なに事もやりすぎは禁物です。体に良いからと言って無理をすると、痛みが強くなったり、さらには膝が痛くなることでかばうような歩き方をすると違う関節を痛めたりケガをすることがあります。
痛みを我慢して行う運動
痛みとは、基本的に体が発しているサインです。痛みを我慢して無理に運動を行うと、炎症がひどくなり症状が悪化してしまいます。
痛みが生じると、人は無意識のうちに痛みをかばうような動きになり、結果正しいフォームで運動が行えなくなります。誤ったフォームで行うことで、関節に負担がかかり、さらに痛みが強くなる悪循環に至ります。
以上のことから運動は少しづつ始めて、無理のない範囲で続けていくことが大事です。1日1万歩などを目安にしている方も多いかもしれませんが、痛いときは無理せず休み、痛みが引いたらできる範囲から少しづつ行いましょう。
薬物療法
痛みや炎症が強い場合には、鎮痛薬や外用薬を組み合わせることで痛みは和らげます。鎮痛薬の中には痛みを抑えるだけでなく、炎症を抑える働きもありますので炎症が強い時は有用です。
痛みが落ち着けば、漫然と使うのではなく少しづつお薬の量を減らすことが大事です。
リハビリ
膝が痛くなると次第に膝関節の可動域が悪くなってきてスムーズに動かせなくなってきます。また膝周囲の筋力が低下することで、膝関節を支えることができず関節への負担も大きくなります。このような状況を改善するために、運動療法は非常に有用であることがわかっており、変形性膝関節症のガイドラインでは「可動域訓練」「筋力強化訓練」「有酸素運動」の3つを行うことが推奨されています。
関節内注射
当院では全例エコーで見ながら確実にヒアルロン酸を関節内に注射しています。ヒアルロン酸には抗炎症作用や軟骨保護作用があり、結果として疼痛を和らげます。また痛みや炎症が強い場合には適量のステロイド薬を関節内に投与することもあります。
装具療法(足底板、サポーター)
変形性膝関節症は膝関節の内側に負担がかかっていることが多いため、足底板を使って内側へかかる負担を減らす方法です。また膝の安定性が低い方には支柱付きサポーターなどをつかうこともあります。
福岡市早良区・整形外科 西新駅前こうのクリニック 河野大