腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアとは
椎間板とは背骨1つ1つの間にあるクッションの働きをしています。椎間板は2重構造となっており、内側には髄核と呼ばれる柔らかいゼラチン状の組織と、外側には比較的硬い線維輪という組織があります。椎間板に日常生活で負荷がかかると、徐々にクッションが傷んできて線維輪に亀裂が入り、椎間板の中心部分である髄核が脱出し、神経を圧迫する状態をヘルニアと言います。腰痛やお尻の痛み、足先に放散する痛み、しびれがでます。
どういう人に多いですか?
椎間板は20代から傷んで来るため、20〜40歳に多く発生しますが、10代でも発症することがあります。また女性より男性がやや多いとされています。また加齢的な変化に加え、軽微な外傷(捻挫や打撲など)や長時間一定の姿勢を強いる作業、スポーツ傷害などが誘因となって発生します。中には、重いものを持った際や「くしゃみ」などをきっかけに発症することもあります。
原因
・機械的刺激
・炎症性物質
主な原因は、椎間板の膨隆や出突が脊髄神経に圧迫を加えることによります。この膨隆や出突は、椎間板に過度な負荷がかかると発生します。姿勢が椎間板に与える影響は大きく、特定の姿勢は椎間板に余計な負担をかけます。例えば、立っているときには体重の約半分の負荷が椎間板にかかりますが、座っていると負荷は約1.5倍、前かがみになると約4倍まで増加します。
姿勢が椎間板に与える影響とは
ヘルニアの原因として椎間板への負荷が問題となりますが、姿勢によって椎間板に与える影響は大きく異なります。椎間板内圧を測定することでどれくらいの負荷が加わるのか調べたデータがあります。
症状
多くの場合、片側の腰から殿部、下肢にかけて痛みやしびれが出ます。一般的な腰痛と違うのは、安静時痛(動かなくても痛い)があるということです。また足のゆびや足首に力が入らなくなったり、つま先が上がらない、おしっこや便が出しにくくなることもあります。また神経の走行に一致して感覚が鈍くなったりすることもあります。
診断
経過、症状、身体診察とレントゲンやMRI検査などで診断をします。またMRI(磁気共鳴画像法)詳細な腰椎椎間板ヘルニアの位置や神経の圧迫状況などを評価するのに非常に役立ちます。しかし、MRIでヘルニアが確認されたからと言って、必ずしもそのヘルニアが現在の腰痛、下肢痛の原因であるとは限りません。過去にヘルニアがあったとしても、今回の腰痛とは無関係な場合があります。実際、多くの人々は無症状の椎間板ヘルニアを持っていることが研究で明らかにされています。このことから、最終的な診断は理学所見が重要であると言えます。
治療
椎間板ヘルニアは多くの場合、3〜6ヶ月で退縮する(小さくなる)ことがわかっており、手術に至るのは約10%と言われています。ヘルニアが小さくなり、神経の炎症が落ち着くと症状は改善されるため、その間お薬やブロック注射、リハビリなどの保存療法で神経に負担がかからないように痛みをコントロールしていきます。
しかし、保存療法で症状がコントロールできない場合や麻痺を来したした場合には手術となります。
保存療法
腰椎椎間板ヘルニアの第一選択で、90%以上の方は保存療法で症状が改善されます。リハビリで神経の緊張をゆるませて、お薬やブロック注射で炎症を抑えることで痛みを和らげます。お薬で症状が改善しない場合は、ブロック注射を行います。ブロック注射には痛みの原因となっている神経に直接注射する神経根ブロック注射と、腰全体の神経に幅広く効かせる硬膜外ブロック注射があります。「注射は一時的な効果しかないのでは?」と思う人もいるかもしれません。しかし厄介なこの痛みを、一時的にでも和らげることで、過敏になった交感神経を落ち着かせ、痛みを和らげること自体が重要な一歩となります。
手術
保存療法で色々なお薬やリハビリ、ブロック注射を行なっても痛みが強い場合には手術が必要となることがあります。また足に力が入らず動かせない、おしっこ・便が出しにくい(膀胱直腸障害)などの場合には緊急で手術が必要となることがあります。