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肩腱板損傷

 

 

腱板(けんばん)って何?

 

肩関節は、体の中で一番自由度の高い(多方向に動かすことができる)関節です。これがスムーズに動くのは、アウターマッスルとインナーマッスルという2種類の筋肉がうまく連携しているからです。「腱板」とはインナーマッスルの部分で、棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋の4つから構成されます。

 

アウターマッスルとインナーマッスル:二つの筋肉の違い

  • アウターマッスル: これは表面にある大きな筋肉で三角筋などが相当します。この筋肉は大きくて太いので、強い力を出すことができます。

  • インナーマッスル(腱板): これは肩関節の内側にある筋肉で、棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋の4つから構成されています。これらが協調して上腕骨を肩甲骨の関節窩に引き付けることで、肩関節を「安定」させて動かす役割を担っています。

 

腱板の役割:なぜ重要なのか?

 

この腱板がすごく重要なのは、関節の安定性を高めるだけでなく、動きをスムーズにしてくれるからです。たとえば、アウターマッスルだけが力強くても、腱板が弱いと肩関節は不安定になります。それはまるで、エンジンがパワフルでもタイヤがぐらぐらする車に乗っているようなものです。この腱板が損傷すると、腕を自分の力でしっかりと上げることができなくなったり、痛みが発生します。上腕骨(肩を構成する骨の一つ)にしっかりと力を伝えられなくなるので、日常生活での動作にも支障をきたすことがあります。

 

腱板の損傷:なぜ起きるの?

1. 年齢と損傷の関係

腱板は、解剖学的に見て、骨と骨(具体的には肩峰と上腕骨頭)の間に位置しています。この特殊な場所のせいで、年齢とともに磨り減ってしまう傾向があります。つまり中年以降の方々によく見られる症状と言えます。事実、80歳になると、約2人に1人は腱板が断裂していると言われています。

2. 外傷と腱板

外傷による腱板の痛みは約半数です。残りは特に明確な原因なしに、日常生活で突然起こる場合もあります。

3. オーバーユース(使いすぎ)

男性、特に右肩に多く見られます。これは肩の使いすぎが原因である可能性が高く、重いものを持ったり、肉体労働に従事する人に多いです。

4. 若い世代でも…

スポーツや事故による強い衝撃が原因で、若い人でも腱板は損傷する可能性があります。

 

どんな人たちに多い?

1. 40歳以上の男性

特に右肩に問題を抱えることが多く、60歳で約4人に1人、80歳で約2人に1人が断裂しているとされています。

2. 特定の仕事やスポーツに従事する人

腕や手を頭よりも高い位置に持ち上げる動作を繰り返す仕事やスポーツをしている人に多く見られます。例えば、塗装業や大工さん、スポーツだと野球やテニスなどが該当します。

 

症状・特徴的な症状

外傷で損傷した場合には瞬間的な痛みが強く走り、その後、肩が動かせないという強い症状から始まる人もいます。しかし腱板損傷は加齢やオーバーユースが原因で、いつの間にか切れてしまっているケースも少なくありません。実際、無症候性の腱板損傷は30〜50%とも言われており、加齢とともにその比率は増えていく傾向があります。腱板損傷でも普通に肩を動かせる方がいますので注意が必要で、下に挙げるように症状は多彩です。

 

  • 就寝時に痛みが出る(夜間痛)
  • 腕を挙げる際、挙げ始めや途中で痛みが出る
  • 髪を洗う時に痛みが出る
  • 腕を前に伸ばすと痛む(前の物を取ろうとしたときなど)
  • エプロンの紐を後ろで結ぶ時に痛む

 

五十肩・四十肩との違いは

五十肩・四十肩と腱板損傷は一見似ていることがあり、五十肩・四十肩と思っている患者さんの中に腱板損傷の患者さんがいる事はよくあります。

五十肩・四十肩は、別名凍結肩と言われるように凍結したように固まって動かせなくなります(拘縮)。これは他の人が肩を上げようとしても関節が固まって動かせません。腱板損傷では肩関節の求心位が保たないために、自分で腕を動かす途中で痛みがでますが、反対の手で補助して動かすと最後まで上がることが多いです。しかし、腱板損傷でも長時間関節を動かなさなことにより、拘縮を起こしている場合は鑑別が困難なこともあり注意が必要です。

 

腱板損傷の治療方法:保存療法から手術まで

腱板断裂には症候性(痛みがある)と無症候性(痛みや症状がない)があり、症候性の方が治療対象となります。基本的には保存療法が第一選択となりますが、保存療法でも痛みが軽減せず、生活に支障がでる場合や50歳以下の場合は手術を行うこともあります。

 

保存療法

痛みに対して、お薬を使います。また直接断裂部位の周囲に炎症を強く抑えるステロイドという薬を注入する注射は、より効果が高い治療です。特に夜痛くて寝れないという場合には、上手にお薬を使うことが有用です。

 

リハビリ

肩の腱板は4つの筋肉とその腱で成り立っていますが、一部に損傷がある場合、残っている筋腱をうまく使えるようにすることで、上腕骨が関節の受け皿の良い位置に保てるように訓練することを行ないます。また肩関節周囲筋や関節包、靭帯などの軟部組織が硬くなり、様々な動作が行いにくくなっています。そのため硬くなっている筋肉などの軟部組織を対象にストレッチやリラクゼーションを行い、肩関節の可動域を改善します。肩関節の動きは、肩甲骨や胸郭、脊柱など、様々な部位が連動して動く関節になります。そのため、肩関節以外の問題となる部位も改善を図ります。

 

手術

お薬や関節注射、リハビリを行なっても痛みが軽減しない、生活に支障がある場合は手術を行います。手術は断裂部が大きくなければ関節鏡手術で腱板を修復します。しかし腱が多数切れていたり、断裂部が大きい場合は人工肩関節置換術が適応となることもあります。

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